Q1アスベストとはどのようなものですか?
A1アスベストは、石綿(せきめん、いしわた)とも呼ばれている天然の鉱物繊維です。
アスベストは、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で、石綿(せきめん、いしわた)とも呼ばれている天然の鉱物繊維です。
1975年まで建設工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける工事が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。
吹付け工事が禁止されたあとも、耐熱性・耐薬品性・絶縁性等の特性があり、安価な工業材料であることから、建材としてスレート材、防音材、断熱材、保温材として使用されていました。
2006年(平成18年)9月1日より製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。石綿がそこにあることで、直ちに健康被害が生じる訳ではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止方、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで飛散防止等が図られています。
繊維が極めて細く、研磨機や切断機などの施設で使用や吹付け石綿などの除去などにおいて、適切な処置を行わないと石綿が飛散してしまい、人が吸入してしまうおそれがあります。
1956年~1975年まで吹き付けアスベストはビルの耐火材、耐熱材として使用されており、そのビルがまさに現在解体時期に入っています。
建築物の老朽化による解体、改築等の工事の増加に伴い、アスベストを含有する廃棄物を適切に処分するように定められています。
Q2アスベスト(石綿)にはどのような危険性があるのですか?
A2石綿(アスベスト)肺、肺がん、悪性中皮腫の原因になるといわれています。
また、建材にアスベストを使用しているビル等の解体(改修)や吹付けアスベストの経年劣化などにより、アスベスト粉じんの飛散が心配されています。
アスベスト材そのものに毒性はありませんが、アスベスト(石綿)の繊維は、きわめて細く、浮遊しやすく、吸入されやすいため肺の中に残ってしまい、石綿(アスベスト)肺、肺がん、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性があることが知られています。アスベスト(石綿)による健康被害は、アスベスト(石綿)を扱ってから長い潜伏期間のあと発病することが多いとされています。石綿を元に仕事で扱っている方(労働者)の健康診断は、事業主にその実施義務があります。(労働安全衛生法)
参照
- 石綿が原因で発症する病気は?厚生労働省ホームページ
Q3アスベスト(石綿)はどのような場所で使用されていますか?
A3アスベスト(石綿)の用途は3,000 種類以上
主に建築資材の原料として使用されておりました。壁材・屋根材・外装材・内装材に利用されています。
住宅や倉庫の軒裏・外壁・屋根等に使用されているセメント板や、ビルの天井・壁に吹き付け材として使用されていました。
建築資材以外に、自動車のブレーキ・電線の被膜材・器具の断熱材・シーリング材等に使用されていました。
現在はアスベストを含む建材等は製造中止となり販売されておりません。
Q4アスベスト(石綿)は、いつから使用禁止になったのですか?
A4昭和50年から段階的に禁止又は使用中止されてきました。
建物の天井・壁等へのアスベストの吹き付け作業は昭和50年に禁止(特定化学物質等障害予防規則)となりました。その後、平成18年9月1日労働安全衛生法施行令が改正され、石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。これによって、新たに建てられる建物にはアスベスト(石綿)は使用されていないと考えられます。
Q5アスベスト(石綿)を含む建材が流通していた理由は?
A5アスベスト(石綿)は、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性など多様な機能を有しながらも安価で、耐火・断熱・防音の目的で建築材料に使用されていました。
ビル・校舎・病院・工場・倉庫・一般住宅や、工作物(駐車場・変電施設)などに使用されておりました。主に昭和38年~50年初頭まで吹き付けアスベストは天井・壁などに吸音・断熱用として使用されておりました。昭和50年に吹き付けアスベストが原則禁止となり昭和43年~昭和55年は吹き付けロックウールに切り替わっていましたが、しばらくの間はアスベストを混ぜて使用されていました。
石綿スレート、パルプセメント板、石綿セメントサイディングなどのアスベスト成型板は、建物の外壁、屋根など広い範囲で使用されていました。
Q6建物にアスベストが使用されているか確かめる方法はありますか?
A6設計図書・分析機関により確認できます。
1 設計図書による確認
建築物を施工した業者に問い合わせて、設計図書を見て確認します。建築時の情報が無い場合は、目視での確認や吹き付けアスベストが規制された年代と建築年、使用されている顕在の用途等により類推する方法がありますが、あくまで目安となります。
http://www.asbestos-database.jp/
2 分析により確認
建材・吹き付け材にアスベストが含まれているか含有調査をおこなうことができます。
アスベスト含有調査をご希望のかたは下記までご連絡ください。
Q7一般の住宅にもアスベスト(石綿)は使用されていますか?
A7昭和30年~50年頃までに建設された店舗併用住宅・鉄筋住宅では使用されている可能性があります。
昭和50年に吹き付けアスベストが原則禁止になった後も、アスベスト含有吹付けロックウールが昭和63年頃まで使用されていました。
その他の一般住宅においても、屋根用スレートなど、建築物の外装であるサイディング、外壁や間仕切りに使用されている押出成型セメント板などにアスベストが使用されていましたが、平成16年10月製造等禁止となっております。
主な建材商品名
一般名 | 商品名 | 建築物種類 | 使用部位 |
---|---|---|---|
住宅用屋根スレート | ニュールイハーフ | 住宅 | 屋根 |
ヘキサー | 〃 | 〃 | |
丸一金 | 〃 | 〃 | |
ハーモニー | 〃 | 〃 | |
サイディング | UBボード | 〃 | 屋根 |
かべ一番 | 〃 | 〃 | |
エンボスサイディング | 〃 | 〃 | |
パルプセメント板 | PC板 | 〃 | 内装、天井 |
サンワボード | 〃 | 〃 | |
防火板 | 〃 | 〃 | |
防火ボード | 〃 | 〃 |
Q8住宅にアスベスト成形板が使われていますが、問題ありますか?
A8アスベスト成形板は、セメントなどで固定されており、切断などをしないかぎり、大気中に飛散する可能性は低いため、健康影響の心配はありません。
解体等の工事については、吹付けアスベストなどと比較して飛散の程度が低いことから、大気汚染防止法や環境確保条例の届出対象とはしていません。
しかし、アスベスト成形板も物理的に破砕した際には、環境中にアスベストが飛散する危険性が高いため、事前に湿潤剤等を噴霧し、十分湿潤化したうえで、手はずしで除去してから解体する必要があります(東京都告示第875号)。
Q9建設リサイクル法で、アスベストに関して定められている内容を教えてください。
A9下記のような規制があり適切に対処する必要があります。
建設リサイクル法に基づき、対象建設工事の届出をする前に建築物等の事前調査を実施する必要があります。その際に、吹付け石綿や石綿を含有する資材の有無について調査し使用されている場合は、届出書にこれらの資材の有無や事前措置等を記載する必要があります。
また、解体工事の際に事前措置を適正におこない、分別解体等の実施にあたる際は石綿法令に従い、各種届出をおこない、適正に施工し処理する必要があります。
Q10石綿を取り扱う作業を行っているのですが、どのような措置を講じればよいでしょうか?
A10石綿障害予防規則等に基づき対策を講じる義務があります。
(1) 労働安全衛生法関係
- 解体、改修を行う建築物に石綿が使用されているか否かについて、事前調査を行う。
- 石綿が使用されている建築物の解体、改修を行う前に労働者へのばく露防止対策等を定めた作業計画を定め、これに従って作業を行う。
- 石綿が使用されている建築物等の解体等の作業に従事する労働者に、石綿の有害性、粉じんの発散防止、保護具の使用方法等について特別教育を行う。
- 石綿作業主任者を選任し、作業方法の決定、労働者の指揮等の業務を行わせる。
- 石綿を含む建材等の解体をする際に、労働者にばく露を防止するための呼吸用保護具、作業衣または保護衣を着用させ、粉じんの飛散を防止するため、建材等を湿潤なものにする。
- 常時これらの作業に従事する労働者について、6か月ごとに1回、特殊健康診断を実施するとともに、1か月を超えない期間ごとに作業の記録を作成する。健診の記録及び作業の記録は40年間保存する。
なお、建設業労働災害防止協会において、事業者の方々からの建築物の解体作業等における石綿ばく露防止対策に関する相談を受け付けています。
(2) 大気汚染防止法関係
吹付け石綿等の特定建築材料が使用されているすべての建築物を解体・改造・補修する工事を施工しようとする方は、都道府県知事等へ14日前までに届出が必要なほか、集じん装置の設置、隔離、湿潤化等の作業基準の遵守が義務づけられています。
届出が必要な工事……特定建築材料を除去、封じ込め、囲い込みをする作業(建築物の規模用件は撤廃されました。施行日は未定ですが、工作物についても規制対象となります)。
Q11アスベスト(石綿)の測定・分析などを行うには資格等は必要ですか?
A11「作業環境測定士」の国家資格が必要です。業として行う場合は「作業環境測定機関」としての登録が必要です。
作業環境測定士は建材等にアスベスト(石綿)が含まれているか、また含まれている場合にどの種類であり、どの位の割合で含まれているか分析し評価・認定します。
作業環境や一般環境の大気中にどのくらいのアスベスト(石綿)繊維が浮遊しているか、評価・認定します。
Q12アスベストを含むの産業廃棄物にはどのようなものがありますか?
A12「廃石綿等」(飛散性アスベスト廃棄物)と「石綿含有産業廃棄物」(非飛散性アスベスト廃棄物)に分けられます。
1 飛散性アスベスト廃棄物
「特別管理産業廃棄物」として扱われています。
吹付けアスベスト・アスベスト保温材・併せて石綿建材除去事業において用いられ、廃棄されたプラスチックシート、防じんマスク、作業衣その他の用具又は器具など、石綿が付着しているおそれのあるもの。
特定粉じん発生施設が設置されている事業場において生じた石綿、特定粉じん発生施設又は集じん施設を設置する工場又は事業場において用いられ廃棄された防じんマスク、集じんフィルターその他の用具又は器具で石綿付着の恐れがあるもの等を指します。
2 非飛散性アスベスト廃棄物
飛散しにくいアスベスト廃棄物で、廃棄物処理法上は普通の産業廃棄物「石綿含有産業廃棄物」として扱われるものです。
建物の解体工事等から発生する石綿スレート板等のアスベスト成形板、石綿工業製品の裁断・切断及び使用済石綿工業製品や摩擦材のバリ及び使用済摩擦材(ブレーキライニング等)が非飛散性アスベスト廃棄物に分類されます。
Q13非飛散性アスベスト廃棄物はどのように処理すれば良いのでしょうか?
A13通常の産業廃棄物に該当し、安定型処分場への処理基準が適用されます。
非飛散性アスベスト廃棄物であっても、建築物の解体工事等から発生する場合、撤去・保管・運搬中に石綿が飛散しやすいので、国のマニュアルに基づき取り扱いましょう。
参考
Q14アスベストが原因で起こる疾患はありますか?
A14アスベスト肺(石綿肺)・肺がん・中皮腫などの疾患があります。
- アスベスト肺(石綿肺)
- 肺がん
- 中皮腫:胸膜、腹膜、心膜または精巣鞘膜にできる悪性腫瘍
- 良性石綿胸水(石綿胸膜炎)
- びまん性胸膜肥厚
アスベスト肺 | アスベストの暴露によっておこります。職業上アスベスト粉じんを10年以上吸入した労働者など潜伏期間15~20年して発症するといわれています。息切れ・咳・痰などが続いたり胸や背中に痛みを感じるなど自覚症状が比較的早期に出る場合があります。 |
---|---|
肺がん | アスベストと肺がんの関係性はまだ十分に解明されていませんが、アスベスト繊維の刺激によりがんが発生するといわれています。 喫煙とも深い関係があることが知られており、アスベスト暴露から肺がん発症まで15~40年ほどの潜伏機関があり、暴露量が多いほど肺がんの発生が多いといわれています。診察・治療は通常の肺がんの治療と同様のものになります。 |
中皮腫 | 肺を取り囲む胸膜、腹部臓器を囲む腹膜等にできる悪性の腫瘍を中皮腫といいます。潜伏期間は20~50年(40年に発症のピークがある)と言われています。息切れや胸痛などの自覚症状が出ることが多く、腹部膨満感や腹痛などで気づくことが多いです。治療法は手術療法・抗がん剤治療・放射線治療などがありますが予後は不良といわれています。 |
Q15アスベストをどのくらい吸ってしまうと発病しますか?
A15アスベストを吸い込んだ量と発病の相関関係が認められていますが、どの程度の量のアスベストをどの位の期間吸い込めば発病するかは明らかではありません。
空気中濃度については基準が設けられており、工場などの空気中のアスベスト繊維は、空気1リットルあたり150本以下と労働安全衛生法に基づく作業評価基準により定められています。
Q16ロックウールもアスベスト同様、健康影響がありますか?
A16ロックウールは人造鉱物線維です。
ロックウールも長期間、大量に吸い込むと、じん肺の原因となります。発がん性については認められていません。現在市販されているロックウールにはアスベストは使用されていませんが、過去にはアスベスト含有の吹き付けロックウール材があったため注意が必要です。
Q17過去にアスベストを吸い込んでしまった。発病を予防するために心がけるとよいことはありますか?
A17禁煙することが重要です。
アスベスト吸入と喫煙を組み合わせることで、より肺がんなどのリスクが高まるため禁煙をお勧めします。
また規則正しい生活を心がけることや、定期健康診断などで疾患の早期発見・早期治療ができるよう心掛けましょう。
Q18「石綿健康被害救済制度」というものがあるのでしょうか?
A18アスベスト(石綿)による健康被害の救済のため、アスベストによる健康被害を受けたかたおよびそのご遺族に対して医療費などの救済給付を支給する制度「石綿による健康被害の救済に関する法律」が平成18年3月27日に施工されております。
アスベストを吸入することによる労働者災害補償法などで補填されない中皮腫や肺がんなど、著しい呼吸機能障害を伴った石綿肺、呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の健康被害を受け、療養中のかたやこれらの疾病に起因して死亡した方のご遺族に対し、医療費などの救済給付が支給されます。
申請先
(独)環境再生保全機構又は環境省地方環境事務所、都内の保健所など
Q19アスベスト作業に従事しているかたの家族もアスベストによって健康障害を起こす可能性がありますか?
A19アスベスト作業従事者の作業着を家族が洗濯するなどにより吸入の可能性があるといわれています。
現在症状のある方は、呼吸器内科などを受診しましょう。受診の際に医師に、家族がアスベスト作業に従事している(または過去に従事していた)ことをお伝えください。労災病院でもアスベストの特殊診断を実施しています。